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宮部みゆき「この世の春」極上ミステリーの感想・書評・あらすじ

★★★★☆ 4.0

宮部みゆき先生の「この世の春」は最近読んだ宮部みゆき作品の中で、かなり面白かった。

「この世の春」の物語は「君主押込」という謎ワードから始まる。

君主押込というセンセーショナルな事件が起き、それに伴って、一見何も関係なさそうな、主人公の周りに、急にいろいろな人が登場してきて、時代物ということもあり、始めは人物を把握しきれず、読むのがちょっと辛くなった。


ちなみに、この世の春の中での「君主押込」は藩主の精神崩壊によって、政治が出来ない(藩主でいることが難しい)と部下に判断され、藩主が幽閉されたことを指す。

 

しかし、最初のつらさを乗り越えると、キャラがたってくるのと、主人公の周りの人々の温かさに良い気分になり、また謎が謎を呼びあまりにも面白く、最後まで寝る間を惜しんで一気読みしてしまった。

 

※ハードカバーの表紙の裏には主な登場人物の紹介と「君主押込」の説明があるので、そこを読むと何とかなった。

 

「この世の春」の物語で起こっていることは、断片的に切り取ると、もしかしたら、よくある話なのかもしれない。


事象だけを見ると現代の話のような気さえしてくる。

しかし、それぞれの事象をうまくまとめて、一気に終わりへと物語が収束してくのはさすがの一言。

 

そして、謎が単純に解けてすっきりするだけではなくてイヤミス(嫌な気分で終わるミステリー)とは違い、感情的な部分も満たされる極上の物語でした。
ただし、子供が悲惨な目に合うので一部やり切れないところもあり。

宮部みゆきさんの「この世の春 上・下」は非常におすすめ。

 

 

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宮部みゆき「この世の春」簡単なあらすじ

主人公の多紀は嫁ぎ先から離縁され、今でいう県庁土木課の上役的な役割を引退した父の世話をしながら、二人で静かに暮らしていた。

そこへ突然幼子を抱いた女が現れ、話を聞いても、父もなぜ自分のところへ女と子供が訪ねてきたのか首をかしげるばかりだった。

その後、「君主押込」があったことを知り、やがてもともと調子があまり良くなかった父が亡くなり、多紀は君主押込にあった張本人である、重興のお世話をすることになり、幽閉されている、別荘へと向かうことになる。

そこにはかつての君主であった、重興がおり、重興の精神状態の不安定さ(多重人格)を知ることとなる。

やがて、重興と接するうちになぜ、重興がおかしくなったのか、その原因を仲間たちと共に突き止めていくことになる。

そこには先代の重興の父の死の謎、多紀の先祖が行っていた御霊繰(みたまくり/イタコの口寄せ的なこと)とその先祖の家の突然の崩壊など、たくさんの謎が現れ、それらの一つ一つを仲間達とともに、解明していき、やがて結論にたどり着く。

 

 

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