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宮部みゆき「悲嘆の門」の感想とあらすじ

●「悲嘆の門」  上・下   宮部みゆき

3.5     f:id:newsalley:20160729160657p:plain

 ネット社会がどうのこうのというあらすじを少し読んで、なんとなく読んでみた宮部みゆきの「悲嘆の門」。

途中までは体の一部が切り取られて発見されるという、連続殺人が起こるミステリー要素が濃厚な作品だった。

目撃情報があった「ビルのてっぺんにある、動く大きなガーゴイル像」が、なぜ動くのか、どう落とし前をつけるのだろうか?

と、とても気になっていたが、急にファンタジーな要素が出てきてガーゴイルの正体がこの世のものではない事が分かり、そのページを2回読み返してしまった。

そして、読み進めていくうちに、このファンタジー設定の世界観を宮部みゆきの本の中のどこかで見た気がすると思い、調べた結果「英雄の書」という本だった。

 

続編というわけではないが、世界観みたいなものが共有され、英雄の書に出てきた女の子が、成長し助言者的な役割で登場する。

最新作のこの世の春の感想↓

newsalley.hatenablog.com

 

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悲嘆の門のあらすじ

なんとなく大学生に退屈さを覚えていた孝太郎は高校のOBに誘われて、インターネットの書き込みを監視する「サイバー・パトロール」の会社でのアルバイトを始める。

 

世間は、体のパーツの一部分が欠けた他殺体が連続で発見される事件が起こり、「サイコキラーによる連続殺人」が起こったとザワつく。

 

一方、警察官として定年まで勤め上げた都築は退職後、ずっと調子の悪かった足をかばい、手術の順番を待ちながらも、時間を持て余し気味にゆったりと過ごしていた。

 

元刑事ということもあり、町内会長に廃墟ビルのてっぺんにあるガーゴイル像が動くという情報があるので、一緒に見てほしいと言われ、事件に巻き込まれていく。

そして、孝太郎の知っている人物にまで、連続殺人の魔の手が伸びていく。

孝太郎はこの世のもではないものと、取引をして、犯人に復讐したいと願い、事件を解決しようとしながらも、次第にこの世の世界ではない世界に引き込まれていく。

という、ファンタジー要素たっぷりの物語となっています。

 

悲嘆の門の感想

3.5/5 点くらい。

物語的にはちょっと?な部分が多く、主人公の孝太郎に共感できない部分も多いけども、おもしろいので、一気に上下巻読めた。


ファンタジー世界の方の要となるのが、「言葉」だが、これについてはとても納得がいくことが多かった。

 

例えば言霊みたいなもの。

これって実際にある気がする。

ネットには悪意に満ちた言葉も多い。
現実では面と向かってはそこまで、キツイ言い方をしないけど、ネットだと相手の顔が見えない分、傷つけたり、批判したり、攻撃したりするような言葉が羅列していたりする。

 

そういった言葉を発した人(ネットでいうと書き込んだ人)に、その自分が発した悪い言葉が蓄積されていくと言われる場面があり、納得がいった。

 

因果応報じゃないけれど、言霊というか、おそらく後ろ向きなことや悪い事を言い続けると自分の無意識のコントロールが悪い方面へ流されて行き、本当にそうなってしまう気がする。

自分が発した言葉というのは自分自身に積もっていき、自分というものを形成する一部になるのではないか。

 

物語の中で、主人公が意識するとその人が背負っているもの(言葉)や、場所に残った言葉の思念が、具現化して見える場面があり、それはその人を覆い尽すほどの大きな人影であったり、虫の群れであったり、吐いてしまったりするほど嫌悪するものが見えたりする。

しかし、一方でとても綺麗な光の輪が見えたりもする。


言葉に宿る力をあなどってはいけないと思った。

言葉とは自分が思っているよりも、ずっと大きいものなのかもしれない。

 

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